指標
受精をめぐる最近の問題点
井上 正人
1,2
,
柏渕 成一
3
,
鈴木 秋悦
3
Masato Inoue
1,2
,
Seiichi Kashiwabuchi
3
,
Shuetsu Suzuki
3
1東京都済生会中央病院産婦人科
2現在:東海大学医学部産婦人科学教室
3慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.675-684
発行日 1976年9月10日
Published Date 1976/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205464
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
最近15年間の生殖生物学の進歩は著明なものがあり,受精に関する領域でもCapacitation現象の解明,in vitroにおける受精などについて数多くのすぐれた業績が報告されてきている。特に精子については方法論的にも生化学的なアプローチが可能であることから,精子貫入に重要な役割を果たしていると考えられている,精子頭部の酵素(acrosomal emzymes)の分離も行なわれ1,2),近い将来,その純化,合成が期待されている。精子の受精前後における形態変化については,電子顕微鏡的に詳細に研究されてきており,哺乳類では,ヒトを含めて基本的には同じプロセスをとるものと考えられている3)。卵子については,その数が限定されていることから,生化学的な分析が困難であり,形態学的研究が主となってきた。特に卵子の最外層を形成する透明層(zona pellu—cida)は,多精子受精(Polysermy),異種間受精(Intersepcies Fertilization)などへの防禦機構としても重要な役割りを果たしていると考えられているが,これに関する報告は非常に少ない。本稿では受精現象解明への生化学的アプローチの一つのステップとして,受精前後の精子および卵子の変化について最近の動向を紹介したいと思う。
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.