特集 実地臨床における胎児胎盤機能検査法とその判定基準
胎児成熟度検査法としての羊水中レシチン測定について
佐藤 和雄
1
Kazuo Satoh
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.555-562
発行日 1976年7月10日
Published Date 1976/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205445
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胎児の成熟度を知ることは,産科医にとつては必須のことで,たとえば血液型不適合妊娠や糖尿病合併妊娠では児の娩出時期決定に不可欠の情報となる。胎児の成熟とは,その成長と発育すなわち形態の増大と機能の発達を意味するもので,それゆえ成熟度判定には胎児の大きさと機能の両面を知る方法が用いられるべきである。胎児についての情報を得るために従来より子宮の大きさ,すなわち子宮底長,腹囲などが胎児の大きさを知る手段として用いられてきた。最近,羊水穿刺(amniocentesis)が胎児の直接の情報を得る方法として行なわれている。これは血液型不適合妊娠の際の,児罹患の重症度の判定ならびに管理への有用性を認めたLileyの発表以来,広く普及するようになつた。胎児の成熟のうちで肺の成熟は最も重要なものの一つで,新生児として胎外生活をするためには不可欠なものである。もしこの成熟が遅れていると呼吸困難が起こり,いわゆる呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome,RDS)が起こり死亡する。これは産科医にとつて重要な問題でRDSを治療する方法が必ずしもない現在胎外生活可能かどうかは肺の成熟が一つの指標となる。本稿では胎児成熟度診断の一つとして胎児肺の成熟度の判定基準となる羊水中のレシチンについて述べてみたい。
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