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羊水中のInsulin濃度
田部井 徹
1
1自衛隊中央病院産婦人科
pp.250
発行日 1985年4月10日
Published Date 1985/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207153
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糖尿病妊婦は,子宮内胎児死亡を起こしやすく,巨大児や奇形児の発生率が高い。また,新生児の予後が不良となることが稀でなく高い周産期死亡率を示す。しかるに糖尿病が胎児に及ぼす悪影響に対する特別な予防や治療は,母体血糖のコントロールを厳重にする以外になく,臨床上,母体の血糖値,Insulin値の測定あるいは糖負荷試験による適切な母児管理が欠かせない。
以上の如く,糖尿病が胎児あるいは新生児に及ぼす影響は極めて大きいにも拘らず,糖尿病妊婦子宮内における胎児の糖質代謝あるいはInsulin濃度に関する研究は少ない。Casperら1),Spellacyら2)およびNewmanら3)によると,正常妊婦の羊水中Insulin濃度は2〜30μU/mlであるという。妊娠中における母体および胎児の糖質代謝は,Insulin,下垂体・甲状腺ホルモンなどの内分泌系あるいは自律神経系によって調節されている。しかるに,女性の内分泌あるいは自律神経系などの内部環境は妊娠により大きな変化を起こすため,母体—胎児における糖質代謝は不安定となる。また,母体の血中Insulin濃度は,妊娠週数とともに増加し,とくに糖負荷後に著明な上昇を示す4)。母体で産生されたInsulinは高分子量のため胎盤を通過しない5)。胎児は,自らInsulinを生成し,尿から羊水中に排泄する。
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