原著
新生児のT3,T4,TSH値の出生直後よりの経時的推移について
中井 利昭
1
,
長滝 重信
2
,
木村 孔右
3
,
坂元 正一
3
,
山田 律爾
1
Toshiaki Nakai
1
,
Shigenobu Nagataki
2
,
Kou Kimura
3
1獨協医科大学臨床病理
2東京大学医学部第3内科
3東京大学医学部産婦人科
pp.151-157
発行日 1976年2月10日
Published Date 1976/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205372
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ヒト新生児が出生を契機として母親の胎内という安全な環境より外界のstressに適応していく過程は,産科的,小児科的のみならず内分泌学的にみても最も興味あるところである。大人(adult)にとつてはおそらくこのような激動期は死に面するまで遭遇することがないと思われるが,新生児期における適応現象についての知見は未だ乏しい。今日adultではadaptation mechanismに副腎皮質系—髄質系や甲状腺系などが関与していることは周知のことであるが,われわれ(中井,山田1〜4))はすでに副腎髄質—交感神経系についてカテコラミン分泌を検索し,胎児より新生児期の適応反応としてカテコラミン分泌が高まり,血中noradrenaline値が50μg/Lにもなることを明らかにした。また仮死で生まれたり,未熟児で生まれてdistressの続いている新生児では同じくカテコラミン分泌が高いことも証明した。この場合adrenalineよりnoradrenalineの方がより分泌が亢進していて,これは胎児・新生児期のnoradrenaline dominantな副腎髄質やZuckerkandl器官という特殊なカテコラミソ分泌器官によると推定した。今回は新生児期の甲状腺系について検索を試みた。1951年Danawski5)は初めて出生後数時間たつとPBI値が上昇することを報告した。
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.