連載 リプロダクション講座・9
胎児の代謝
福井 靖典
1
,
東郷 義周
1
Yasunori Fukui
1
,
Yoshichika Togo
1
1日本大学医学部産科婦人科教室
pp.779-785
発行日 1975年10月10日
Published Date 1975/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205242
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胎児は,微細な性細胞が受精し驚くべき早さで分裂をくりかえし,約280日後には身長約50cm,体重約3,000gとなり,形態的にも機能的にもほぼ完成し自力できる能力をもつて出生してくる。このように胎児の成長発達の過程はきわめて急速であり,しかも母体がかつて歩んできたのと同じ個体発生,分化の過程を正確に踏襲しており,自然の摂理とはいえまさに驚異的である。したがつて,そこに営まれる胎児発育のための代謝は,胎児自身で営まれる代謝,胎盤の代謝および母体の代謝が一定の代謝機構の枠内で互に密接に共軛協調したものであることは当然である。
この胎児の発育機構のinitiationについては,胎児はその発育に必要な栄養素を子宮内という特殊な環境下で胎盤,臍帯を通じて母体に依存していることなどから,かつては母体ないしは胎盤が重要視されていた。
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