連載 リプロダクション講座・7
胎盤の内分泌
東條 伸平
1
,
望月 眞人
1
Shimpei Tojo
1
,
Matsuto Mochizuki
1
1神戸大学医学部産科婦人科学教室
pp.601-610
発行日 1975年8月10日
Published Date 1975/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205215
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胎盤は生殖というかなり巨大な現象を維持する必要性をもつた臓器であり,しかもこれがもつきわめてユニークな内分泌機能は下垂体や性腺の機能とアナロジーに,かつこれらを代行し,包括するほど大きなものと考えられてきた。
胎盤の内分泌はこれとユニットを構成する胎児の存在によつてきわめて特殊なものとなる。特に胎盤から分泌されるホルモンの量は多く,母体の少々の変化でその分泌量や分泌能が変らない。また,妊娠時にみられる生物学的諸現象はこのような胎盤を接点とした母児相関の表現であり,「胎児・胎盤・母体系」における動的状態のあらわれである。目的論的にいえば,新しい個体の誕生のために集約された多数の現象の集合でもある。したがつて,胎盤の研究はこのような環境の中で1つの生命が育つそのからくりをとく鍵であり,またそのような生命をはぐくむ母体に起こるあらゆる現象のメカニズムをとく鍵ともなる。このような意味から,ここであらためて胎盤の内分泌について考察してみたい。
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