トピックス
妊娠卵のゆくえ
広井 正彦
1
1山形大学産科婦人科学教室
pp.623
発行日 1975年8月10日
Published Date 1975/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205218
- 有料閲覧
- 文献概要
先天異常の発生率は,各国・地域・社会・経済的要因により異なつている。最近,極度の先天異常児の出生を人為的に予防するために,出生前に児の染色体や母体血中のα—fetoproteinなどが測定され,その対策が行なわれてきている。しかし,このような人為的予防対策の他に,自然が何らかの形で異常児の出生予防に関与していないだろうか。
この問題について,すでにHertigら1)は妊娠と判明し,何らかの意味で子宮全摘または卵管摘除された婦人211例より,妊娠2日目の2細胞卵より,絨毛におおわれた妊娠17日目の着床卵など合計34個の妊卵を形態学的に観察し,このうち21例は正常であつたが13例は異常であることを見出した。この異常は妊娠8日目ごろよりみられ,その後時期が経つにつれて増加し,ちようど,次の月経がこないと気づくころの脱落膜形成の初期頃に増加する。この着床した子宮内膜は正常であるが,おそらく妊卵の不十分の刺激により黄体の分泌能がわるくなるので,流産はまぬがれない。したがつて,婦人が自分で妊娠と知る以前に異常妊娠卵は流産してしまうものが多いのではないかということを示唆している。
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.