カラーグラフ 臨床家のための病理学・13
子宮疾患・Ⅳ
滝 一郎
1
1九州大学医学部産婦人科
pp.94-95
発行日 1973年2月10日
Published Date 1973/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204773
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異形成を軽度と高度に分ち,上皮内癌と区別することは1961年ウィーンにおける国際細胞学会で規約されたことであるが,厳密な形態学的規準は定められていない。また実際に,高度異形成上皮と上皮内癌との形態学的鑑別は毎常容易であるとは限らない。上皮内癌についても,癌性変化が上皮内にとどまつていること以外には,国際的共通した形態学的規約はない。
一般に上皮内癌を診断するには,また,上皮内癌と異形成を区分するには,細胞の異型性,細胞の極性の乱れ,核分裂の増加の程度が規準となり,これに加えて,深層から表層へかけての細胞の形態学的分化(あるいは成熟)の段階が認められるか否か,またそれが異常であるか否かが問題となる。多少にかかわらず分化が認められるのは上皮内癌としないで異形成とする病理学者(Reaganら)もあるが,一般には,浸潤癌が分化型,未分化型に分類されるように,上皮内癌でも分化型が認められている。分化の段階,あるいは分化の勾配の出現は,上皮細胞の生物学的性格の形態学的表現のひとつである。癌細胞ではその表現が正常の上皮細胞とは異なつてくるであろうことは容易に考えられる。
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