特集 産婦人科の治療その限界と展望
日常臨床上よくぶつかる頑症疾患の治療の限界
婦人科
腟部びらん
野田 起一郎
1
Kiichiro Nada
1
1東北大学医学部産婦人科
pp.1095-1097
発行日 1972年12月10日
Published Date 1972/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204726
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一般婦人に対する子宮頚がんについての啓蒙がすすむにしたがい,不正性器出血や帯下感を主訴として来院する婦人が激増している。これらに対しては細胞診,コルポ診および組織診などによつてがんのスクリーニングや確定診断が行なわれるが,がんとは無関係な腟部びらんや頚管ポリープあるいは慢性頚管炎が発見されることがきわめて多い。子宮腟部びらんの存在は性成熟期にある婦人の50〜70%におよぶとされ,このような年齢層の婦人にとつては,むしろ生理的状態とされる。したがつて,子宮腟部びらんのすべてが治療の対象となるわけではないが,腟部びらんの存在により頚管炎を惹起しやすく,このことが帯下感や接触出血などの愁訴の原因となることが多い。婦人科医が治療の対象とするのはこのような愁訴を伴なう腟部びらんであるが,現在のところ手軽な薬物療法はその効果が的確でない場合が多く,観血的療法にはそれなりの欠点がある。
本稿では編集の主旨にしたがい,腟部びらんの発生と治癒の機転,治療法の種類とその選択,治療の適応と限界について筆者の考えを述べたい。
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