特集 産婦人科薬物療法の基礎知識
妊婦とくすり
松山 栄吉
1
Eikichi Matsuyama
1
1東京厚生年金病院産婦人科
pp.969-974
発行日 1972年11月10日
Published Date 1972/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204702
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妊婦に対する薬物療法の目的は,妊婦に生じている異常の状態を取り除き,妊婦の健康と妊娠経過の正常化を図るとともに,胎児の発育を順調にし,先天異常を予防し,健康な新生児の出生を期するにある。しかし1961年Lenzのサリドマイドの胎児に対する催奇作用が警告されて以来,世間の注目が第一義的な薬剤の効果よりも,第二義的な副作用のほうに移るようになり,妊産婦に対する投薬は医師にとつて軽視できない問題となつてきている。たしかに妊産婦への薬物投与が,母体の状態を改善しえても,胎児に障害を与えるならば,その効果は相殺されるばかりでなく,かえつてマイナスのほうが表面に立つ場合も出てきうる。
実際に文献をふり返つてみると,ほとんどあらゆる種類の薬に,妊産婦ないしは胎児に対し,なんらかの副作用のあることが示されている。したがつて薬物投与にさいする十分な注意が必要であることはいうまでもない。とくにその点の注意を中心に,妊産婦に対する薬物療法の問題点を述べてみよう。
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