紫煙考
たばこと妊婦
松山 栄吉
1
1愛育病院産婦人科
pp.1116-1117
発行日 1979年7月10日
Published Date 1979/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215983
- 有料閲覧
- 文献概要
たばこの害の評価と専売公社
本年2月18日の朝日新聞東京版に,国立公衆衛生院行政衛生学部の前田信雄氏が,たばこの害を金額に換算して,死亡や疾病による収益の損失,医療費,火災による損害を加えると,1年間に1兆1,406億円にも上るという研究結果を発表したという記事が,大きく報道されていた,その分析の内容が妥当であるか否かの問題は別として,そこに付け加えられていた専売公社広報課の反論の中に,次のような言葉のあったのが,とくに筆者の注意をひいた.「この計算では,たばこを吸う人に対する心理的な効用が入っていない」と.
愛煙家の中には,この専売公社の反論を,我が意を得たとばかり主張する者も,相当いるものと考えられる.それならば嫌煙家は当然のごとく逆襲するであろう.「愛煙家の心理的効用を計算するならば,それから,ぜひ嫌煙家の心理的苦痛を差し引いてもらいたい.たばこを吸わない者が煙をむりに吸わされる苦痛は,愛煙家の想像をはるかに凌ぐものである」と.
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.