臨床メモ
切迫流産の予後
竹内 久弥
1
1順天堂大学産婦人科
pp.567
発行日 1971年6月10日
Published Date 1971/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204429
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切迫流産は日常非常にしばしば遭遇するものでありながら,その原因が適確に把握できないところから,予後の判定に苦しむことが多い。Hertigら(1944)によれば1000例の自然流産のうち,61.7%に卵の異常を認めたといい,Carr(1967)は自然流産胎児の22.5%に染色体異常を認めたという。しかし,これらの事実と切迫流産という臨床症状がどのように結びつくのか,現在明らかではない。従つて治療の面でも決め手を欠くことはやむを得ない。
一般的にいう切迫流産の予後については,すでに多くの統計的観察があるが,ここではJohannsen (ActaObst.et Gynec.Scandinav.49,89,1970)の報告を紹介する。切迫流産の定義は,20週以前の子宮内妊娠で子宮出血を伴なうもので,頚部の短縮はなく,外子宮口は閉鎖しており,子宮収縮はあつても良いとしている。この定義による切迫流産の病名で入院した266例に,治療としては,201例が安静臥床のみ,65例がこれに黄体ホルモンの投与が追加された。これら2群の流産率はいずれも約50%で差はない。49.2%が早産ないしは満期産をなし得たが,その比率は25:106で未熟児発生頻度の高いことが注目された。児の奇型は3例であつた。入院時期としては妊娠9〜12週が最も多いが,この時期の児の予後が最も良く,これより遅くても早くても周産期死亡率は高くなる。ただし,流産率は入院時期が早いほど高い。臨床症状の重症度と予後は比例する。自然流産の既往は今回の切迫流産の予後に関係ないが,人工中絶の既往は流産率を高め,周産期死亡率をも高める。
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