Medical Scope
「切迫流産」という診断名
島田 信宏
1
1北里大学医学部産婦人科
pp.606
発行日 1996年7月25日
Published Date 1996/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901517
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「切迫流産」という診断名は,産科医療の中ではとてもよく使われていますし,みなさんも毎日のように聞いたり,口にしていることでしょう。しかし,最近では超音波断層診断の発展のために,内容的に以前とは少し違った意味になってきたようです。今回はこんな話題です。
「切迫流産」とは,下腹部痛や出血などの流産の症状があるものの,子宮頸管は開大せず閉鎖しており,胎児は生存しているという状態につけられた診断名です。胎児が生きているという条件があることを忘れてはなりません。したがって,今日では妊娠初期の胎児が確実に生存している証拠というのは,超音波断層法で胎児の心拍動を確認することなので,それをみてつけられる診断名であるということを理解して下さい。多くの研究が示しているように,妊娠初期の流産例ではほとんどの胎児が先天異常例であること,殊に染色体異常例が多いことはすでにご存知のとおりです。したがって,妊娠初期の流産した胎児は,ほとんどの症例で超音波断層法で心拍動を確認されないまま流産に至ります。つまり,心拍動が認められるまで発育せずに死亡(流産)してしまうということになります。
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