特集 不妊症の診断
不妊症の心身医学
長谷川 直義
1
,
村井 憲男
1
Naoyoshi Hasegawa
1
1東北大学医学部産婦人科教室
pp.505-510
発行日 1970年6月10日
Published Date 1970/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204224
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はじめに
近年におけるめざましい医学の進歩は,高度な専門化の傾向をもたらしたが,その反面,病める人間を全体的かつ綜合的に観察するという方法を失いかけている。ここに心身医学は当初こそは患者の一部である心を重視することから出発したが,近年においては内分泌学,自律神経系に関する研究,精神生理学などの知見に裏づけられて,患者を心身両面から全体的に理解する綜合医学であるという概念にまで発展しつつある。最近,不妊に関しても心身医学の立場から,これに検討を加えようとする気運がおこり,すでに坂倉,岩淵らによる報告のほか,筆者の一人長谷川も心理的要因が主因となって無排卵,無月経などの月経異常をきたし,そのために不妊となっている症例やその発生機序について報告した。しかし,卵管因子や内分泌因子だけでなく,不妊をきたすその他の要因を含めての心身医学的接近も,今日重要な課題の一つである。そこでわれわれはFischer,deWatteville,Paltiなどによるこの方面の知見を紹介しながら,以下臨床上の問題点をのべてみたい。
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