産婦人科における精神身体医学・4
心身症患者の扱い方
長谷川 直義
1
1東北大学医学部産婦人科学
pp.29-33
発行日 1964年2月1日
Published Date 1964/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202695
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1.上手な患者の扱い方
人間の病気を診断・治療するにあたって,ただ身体面からのみ検査したり,治療したりするだけでなく,患者の感情面にたいしても考慮をはらってゆくのが精神身体医学の臨床である.その診療の第一歩は,患者との面接によって,患者の心の奥にひそむ隠れた病気の原因を見いだすことである.診断方面は医師がおこなうわけであるが,患者がしめす感情や環境などにたいする考慮は,ひとり医師だけでなく,心身の病に悩む人々に接する立場にある看護婦,助産婦,保健婦,ソーシャルワーカー,その他の人々にとって,日常切実な問題となっている.われわれは患者にたいする会話を,従来「ムンテラ」と称して,まったく常識的にあるいは経験的に会得させられてきた.そして通常,「ムンテラがうまい」といえば,それは「医学の実力はさっぱりないが,口先だけは巧みである」と同じ意味にとられ,これを軽視してきたのも事実である.ところが,精神身体医学的な診療は医師と患者,また看護者と患者の信頼関係の上に立って,はじめて可能なことであり,これが基本である.そしてこのような信頼関係を生むためには,両者の間でとりかわされる会話,ことばというものが重要な手段となるわけである.ただし,このさい患者にあたえられることばは,多くの医療機械や化学的な手段と同じく,正しい心理学によって裏づけられた技術的で,合理的な原理を活用したことばでなければならないわけである.
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