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心身症は,その発病や経過に心理的な要因が大きく関与している身体障害である。産婦人科では内科と異なり,器質的病変を伴う心身症よりも器質的病変を伴わない機能的障害の段階にある心身症患者の頻度がはるかに多い。更年期障害や自律神経失調症と診断されるもののうちの一部がそうである。
更年期障害や自律神経失調症はもちろん,多くの婦人科心身症はすべて神経症である,という指摘もある。この説では。神経症としての発生機序の探求もせずにホルモン剤や自律神経調整剤のみの機械的投与で著効をきたす,更年期障害や自律神経失調症が70%も存在するという事実が理解できない。たしかに,これら婦人にみられる機能的障害の一部は神経症であり,これらの身体症状は不安神経症,ヒステリー,あるいは心気症などが訴える身体症状であるかも知れない。しかし,更年期障害や自律神経失調症は身体症状のうえからみただけでは,心因性か非心因性かの区別がつけがたい。そこで,身体症状が心理的要因と密接に関係して起こっている病態を心身症と定義して,これらの疾患も心身症に含めて扱うことにしている。本態的には神経症と同一であるかもしれないが,治療法はおおむね同じであるので問題はないと考える。しかも,神経症タイプの心身症であればとらえ方も比較的容易である。問題は神経症の特徴を示さない心身症である。最近,心身症の特徴としてアレキシシミア(alexithymia)といわれるものがsifheos,P.E.1,2) や Nemiah,J.C.3)によって提唱され,これを紹介した池見ら4)によって心身症を神経症学の延長線上で考えるのは誤りであると指摘されている。アレキシシミアは,神経症と異なり,無意識的な不安や葛藤が少なく,神経症的な防衛機制が働いておらず,依存的でないために心理的ストレスに自分で耐えようとして,ついに身体症状を発生させているので,従来の方法ではとらえにくい。以下,これらの点を含めて,心身症の新しいとらえ方を解説したい。
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