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はじめに
ブドウ状肉腫はその名の示すとおり,腫瘍の外観がブドウ状を呈するところから命名された悪性腫瘍であり,Guersant1)により1854年に初めて記載されている。本症は一般には幼児および子供の尿性器に最も多く発見され,男子では膀胱,次いで尿道および前立腺に,女子では腟がほとんどで,膀胱には少ない。またFarinacci2),Horn3)らは稀ではあるが,総胆管,鼻咽頭,中耳,上顎洞にも認めたと報告している。本症は組織学的には一定していて,個々の症例によつて変化していることはなく,上皮下組織中に発生し,乳頭状に棘細胞を持ち上げていて,細胞は小さく黒く密に詰まつていて,紡錘状であり,細胞の配列状態は乱れている。これは子宮のmixedtumorとしばしば混同されやすく,New YorkのMe-morial Centerでは,mixed tumorと診断された組織を再度検討して,これらの中にsarcoma botryoidesであつた症例をいくつか報告している。本症は一般に腟全体および子宮頸部へと進展し,さらに骨盤内臓器(膀胱および直腸をも含めて)へと広範囲に転移し,遠隔転移としては肺転移が報告されている。またリンパ節への転移としては,骨盤内リンパ節のほか,鼠径リンパ節および鎖骨上リンパ節などがあげられる。治療方針としては,現在までの文献的な考察からは早期診断後,すなわち腫瘍が上皮下に限局している間にhysterectomy+partialvaginectomyに加えて,放射線療法が試むべき方法と考えられる。本症の予後は非常に悪く,ほとんどの例において1年以内に再発し死亡しているが,Reisach4)やDöderiein5)らの治癒例も報告されている。われわれは最近全経過を観察しえたsarcoma botryoidesを経験したので,その概要を報告する。
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