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大気汚染に関する経過報告/ペニシリン耐性黄色ブドウ状球菌
西川
pp.313,318
発行日 1958年6月15日
Published Date 1958/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201972
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ここ数年来,わが国の公衆衛生学会・衛生学会等の研究発表機関において公害特に大気汚染に関する研究成果の報告,特別講演が取り上げられている。それがビキニの核爆発による人工放射能物質による大気汚染に刺戟されて発展したとは思われない。大阪市では戦前よりこの問題を取り上げて,市民の健康及び生活をまもる努力が続けられており,尼ヶ崎市・東京都でも最近数年間は熱心に検討されている。しかしまだ一般の都市において真剣に考慮をはらつているとは思えない様である。
この問題はMac Kenzieのいう通り比較的新しい公衆衛生問題であつて,特に都市衛生の課題である。都市化すると重工業が次第に発展し,その燃料消費の増大とともに,運輸機関や廃棄物処理が強化されてくる。また住民の生活程度の向上につれて家庭燃料の排気ガスも増して市民の健康にさわる様な状態が起つてくる。それは昔の「伝染病を撲滅」したような方式ではこく服されえない困難さをもつている。しかも使用する燃料の種類が変つてきた。米国では1900年には燃料の90%は固形のものであつたが,現在では70%が液体燃料であるから,汚染物の測定も複雑な技術が必要になつてきた。大気汚染になやむ米国の地域社会は10,000に達しているというが,この被害は生活用品・植物等の害を含めて10億ドルを上回るとの調査報告がある。
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