薬の臨床
婦人膀胱炎に対する酵素療法
長内 国臣
1
,
田中 清隆
1
Kuniomi Osanai
1
1横浜警友病院産婦人科
pp.901-905
発行日 1969年10月10日
Published Date 1969/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204110
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はじめに
婦人科における尿路感染症は男子と異なり,特異な位置を占めている。すなわち,その第1は女性は男性にくらべて頻度は2倍も多く,しかも20歳以上の全年齢層にわたるため,頻度の多い疾患であること,第2は月経周期に伴う膀胱上皮の変化,また,いわゆるhonney mooncystitis,そして妊娠による細菌尿の出現と,それが1〜4年にもわたる感染,ひいては妊娠時の腎盂腎炎につながること,分娩後の膀胱麻痺,次いで更年期にみられる尿失禁,また子宮筋腫,子宮脱,卵巣嚢腫などにおける排尿障害,子宮癌術後のいわゆるWertheim-Blase,術後の留置カテーテルによる感染などがあるからである。その結果,婦人科的泌尿器科学という新しい体系を整えつつある現状である1〜3)。
したがつて,その治療薬剤も菌耐性の問題もふくめて新薬を用いる傾向がみられ,たとえばnalidixic acid(ウイントロミン)4〜6),nitroflurantonin(フラダンチン)7〜11),ウロサイダル12〜14),ウロピリジン15)などの報告がみられるが,最近,蛋白分解酵素療法による膀胱炎治療の新知見が森新太郎氏らにより発表されたが16,17),本剤の有する消炎作用という直接作用と抗生剤の抗菌作用を容易に感染菌に到達させるという間接作用に興味をおぼえ,追加,検討を加えたので報告する。
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