今月の臨床 ゴナドトロピン--今日の焦点
ゴナドトロピンの臨床—特にHMGを中心として・症例の選択と臨床成績
小林 拓郎
1
,
渡辺 卓
1
Takuo Kobayashi
1
1東京大学医学部産婦人科教室
pp.675-683
発行日 1968年8月10日
Published Date 1968/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203923
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はじめに
従来,無排卵婦人に対する治療としては,間接的な方法としてエストロゲン,プロゲステロンなどの性ステロイドを単独にあるいは組合わせて周期的に投与する方法,また,副腎皮質ホルモン,甲状腺ホルモン,あるいは精神安定剤等を投与する方法が用いられてきたが,これらは,効果が不確実であり,多くを期待することができなかつた。
一方,直接に卵巣を刺激する方法としては,妊馬血清中に見出された著明なFSH作用と弱いLH作用を有する性腺刺激ホルモンPMSに,強力なLH作用を有するヒト胎盤由来のHCGとを組合わせて行なうPMS-HCG one two cyclic therapyが無排卵症の治療に古くから用いられ,Ham-blen1),2), Rydberg3),4),5)らにより考按され,松本,五十嵐らの個別的二段投与法(ITP法)6),7)あるいはStaemmlerの漸減方式8),9)などによつて,改良され,発展してきた。クロミッド,HMGの開発される以前においては,性ステロイドホルモン療法による排卵誘発には余り期待できなかつたためもつとも有効な排卵誘発法であつたが,PMSが妊馬血清に由来する異種蛋白であるため,患者血清中にこれに対する中和抗体を生じ易く,治療を反復するにつれてその効果が急速に減弱し,充分な成果を挙げることができなかつた。
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