特集 胎盤
その基礎と臨床
胎盤の免疫・3
妊娠中毒症との関係
加来 道隆
1
Michitaka Kaku
1
1熊本大学医学部産婦人科教室
pp.987-989
発行日 1966年12月10日
Published Date 1966/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203606
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Ⅰ.序論
胎盤成分が母血中に進入することは,すでに1893年Schmorlが子癇患者の剖検で肺に絨毛細胞を認めて以来知られ,これが妊娠中毒症のアレルギー説の発端をなしたともいえる。その後妊婦血清中に胎盤抗原・なかんずく胎盤蛋白を存在することは,内外多数の研究者により血清学的に証明されているが,胎盤成分は母体に対してはたして抗原性をもつのであろうか。周知のごとく胎盤は母体性成分と胎児性成分とからなつており,胎児性成分の中にはその成分も含有されているはずであるから,胎盤や胎児は母体に対しては異物であるはずである。
生体内においても変性組織に対し自己抗体が産生され,自己免疫疾患が起こりうることは,橋本氏病のみでなく最近は臨床各科に漸次認められつつある今日,母体に対する胎盤の抗原性の有無は産科領域でも学問的にもきわめて重要であり,また興味ある問題でもある。胎盤の免疫原性を云々する場合には,その成分である蛋白・類脂体および多糖体のそれぞれについて論ずることが必要であろう。古典血清学では臓器蛋白は特殊なものを除いては自己抗原性がないといわれていたが,最近の研究では,ある条件下では抗原性を発揮して,自己免疫疾患をおこしうることがしられている。胎盤蛋白についてのこの種の研究成績はほとんど陰性であるが,高岡は家兎胎盤蛋白を家兎に注射して同種抗体の産生に成功している。
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.