日常診療メモ・29
子宮頸癌手術手技のあれこれ(その1)
清水 直太郎
1
Naotaro Shimizu
1
1九州大学温研産婦人科
pp.541-545
発行日 1966年7月10日
Published Date 1966/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203515
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はじめに
子宮頸癌の手術は婦人科手術の最高峯であり,その完遂が苦しいだけに術後の快感は婦人科医の冥利のといえる。ことに我国における子宮頸癌の手術は,岡林術式の出現についで荻野,三林先生による一層の進歩によつて世界のレベルを凌駕しているので,術者としての満足感は一段と大きい。しかし,この手術には神技的な特殊技能が必要であり,一般には近より難いもののような観念を抱きがちであることは否めない。近年の手術書,ことに小林隆教授の著書「子宮頸癌手術」は,この手術の深遠な奥義とされているところを極めて明解に,しかも懇切丁寧に説き,手術法の原則を理論的に確立している。これは子宮頸癌手術実施の普遍化にとつて真に意義が大きい。著者は子宮頸癌手術をするときはファイトを燃やすために術前に必ず手術書をひもとき,また反省と理解のために術直後にも読んでいる。このようにして手術症例を重ねてみると,手術の原則では全く変わりがないが,細かい手技の点では色々で,なかなか思うようにゆかぬことがむしろ多く,生来不器用な著者は種々苦労して工夫したところがある。しかしそれ等はいづれも枝葉末節のことであり,多少無駄に遠回りしていると感ずるものも確かにあるが,不慣れなものにとつては安易感が大きいために捨てがたく思つている。また著者の試みも以前と比べてみると漸次変化してきており,小林法を愛用するに至る前段階として用いたものもある。
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