綜説
人体の老化
鈴木 雅洲
1
,
広井 正彦
1
Masahuni Suzuki
1
1新潟大学医学部産婦人科教室
pp.753-762
発行日 1964年10月10日
Published Date 1964/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203134
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緒言
戦後新らしい課題の一つとして注目されてきた問題には,Aging (老化)がある。そもそも時代の変遷とともに疾病の種類も変化するといわれ,ともに戦後の疾患構造,死因構造の変化もその例外はでなく,結核を主とする伝染性疾患による死亡は激減し,老年人口はますます増加の傾向を呈するにいたり,成人病に対する関心がとみに重要性を帯びるにいたつた。一方,生物体が崩壊して熱力学的平衡状態である死に向かういわゆる老化現象が,従来,病理学的退行変化と考えられていたが,近年病態生理変化とみなされ,直接間接にも人間の生命の問題にも関連して,生物学者,医学者はもちろんのこと,薬学,化学,物理学者の注目をひくところとなり,その成因の追求,治療法,予防法などが試みられるようになり,人々の多大の期待と関心がかけられるにいたつた。
わが国にも,最近,篠原1)2)(1962)らの多くのすぐれた綜説3)4)が発表されたが,まだ産婦人科医の関心が少ないように思われるので,ここに老化研究の趨勢をのべてみたいと思う。
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