PROPOSAL
不妊センターの構想に関する一提案—特に人工授精の問題を中心として
藤森 速水
1
1大阪府立大学
pp.750-752
発行日 1964年10月10日
Published Date 1964/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203133
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1. 不妊センターの意義
妊娠の成立ということは男女両性の相互の関係から総括的な判断が重要視せられ,ことに生殖に関係ある事象は,結婚生活の環境的生理的要素も多分に加味されるので,他の疾患の診察や治療を行なう場合と違う特異性を有している。それ故不妊クリニックは特殊診療を必要とする。しかしながら不妊クリニックとして理想的な系統的諸検査を行なつて,その原因を追究できる機構を設けることは一部の限られた病医院であつて,実際問題として各専門の人員を配置する必要もあるから十分な実績をあげるには機構的にかなりの困難があると思われる。また不妊の診療は長期に亘る根気と治療が要求せられるので受診者も徹底した診療から遠ざかることが多くあるいは次から次へと病医院を移りかわるのは日常経験するところである。これら受診者に対する不妊診療の特異点を啓蒙する目的で,沢崎教授(日大)は空に舞う凧の署により,1)夫婦共に診療をうけること。2)病院診療と自宅療養を併用すべきこと,3)長期間の系統的総合診療を行うこと,4)診査が治療に直結していること,等を受診者にわかり易く説明する方法により不妊ドックの必要性を提唱されている。一方診察する側としては個々の病院の施設や検査能力或いは一般外来診療に連繋する人的配置の体制等より制約を受ける問題も多く,不妊という特異の状態を現わす症状群に徹底した診療を行ない得ないのも己むをえないものと思われる。
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