提言 PROPOSAL
奇形に関する研究・綜説・症例報告を望む
遠
pp.457
発行日 1963年6月10日
Published Date 1963/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202824
- 有料閲覧
- 文献概要
本誌前号,本欄の冒頭に貴家教授の発言があつて,サリドマイド禍研究班実現前後の雰囲気が一種騒然たる調子を帯びていたことがよくうかがわれた。ジャーナリズムの活溌な報告に比して,学界からの発言は極めて慎重であつたが,貴家教授の伝えられているこの問題にまつわるムードは普く臨床の場に押し寄せていた。かりそめの発言が与える深刻な影響を顧慮されていた専門家諸賢の心づかいも,研究班実現,そして医学総会における森山教授の画期的な奇形児出生統計の発表などの成果へ着実に実つていつたことは大いに喜こばしい。この際,むしろ嚢中に貯えおきの症例,類似症例などの積極的発表により,一層,問題の学的究明に資せられんことを望みたい。
「世界女族物語」という映面ではサリドマイド・ベビーの写真が編集されていて,賛否交々の物議をかもしていたが,いずれもそのいたましさに自説の出発点をもつているという事実は蔽うべくもない。産科学が,このいたましさの感情と全く無縁に,問題究明にすすむということも,また有るべくもないことではなかろうか。必要以上に脅え怖れる妊婦の心事はもはや一笑に付し難いまでになつている。
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.