同人放談
新しいカリキュラムをめぐる問題点
植田 安雄
1
1神戸医大
pp.1039
発行日 1961年12月10日
Published Date 1961/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202544
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戦後我が国の医学教育の在り方について論議される機会が多くなつた。殊に最近では新しい「カリキュラム」を採り入れた大学もある処から,身近な問題として関心が昂りつつある。従来の様にしやべり放しの「ノート」一辺倒のやり方の充分でないことは誰しも同感であろうが,欧米流の懇切丁寧な方式を我が国に採り入れるとした場合,いくつかの障壁がある。実験科学の内の一つである医学を教える場合,学生を一堂に集めて「マイク」で聞かせる式のやり方は適当でないことは判りきつている。学生を幾つかの「グループ」に分けて指導するとなれば「スタッフ」の沢山要るのは当然であるが,現在の大学の職制のままでやろうとすれば,何処かに無理が出る。教授は同じことを何回かしやべらせて過労に陥り,助手は講議準備に追われて考えたり研究したりする時間がない。無給で学外から応援を求めている処もあるらしいが,大学非常勤講師と云う美名(?)丈で,何処迄満足して,協力してくれるかは問題である。「奉仕」のみを強いる虫のいいやり方と云わねばならない。今のままの制度で,新しい「カリキュラム」をやろうとすればこんな非情なやり方も止むを得ない。
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