特集 第15回社会医学研究会
一般報告
今日の医療をめぐる問題点
水野 洋
1
1大阪大学衛生学数室
pp.680-683
発行日 1974年12月15日
Published Date 1974/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204930
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1.僻地の医療問題
西郡の報告「木曽谷における地域精神衛生活動の反省」の要旨は,主として昭和35年以降の長野県木曽保健所管内での精神衛生活動の経過とそこからの反省点,今後の課題を述べられたものである.長野県においても国の精神衛生施策が直ちに反映され,昭和36年の精神衛生法一部改正による施行通達の結果,措置入院の促進,生活保護から措置入院への移行が進められ,医療扶助に名をかりた措置入院は3年間で3倍化するに到った.昭和40年には"精神障害者の連絡に関する申し合せ"と称する精神障害者の人権を無視した県衛生部長,県警本部長,検事正の3者の申し合せが出されたりしている.木曽谷地方でもこの傾向は1年遅れの形で,しかも顕著にみられていたが,とくに木曽谷は精神科無床地区であった.保健所が地域精神衛生活動に着手しはじめた契機は,昭和44年に県立木曽病院に郡下唯一の精神科が開設され,外来担当医師が常勤する時点からであり,それまで保健所には精神衛生嘱託医は居たが,これは入院,収容のための出先機関的な色彩が強かった.木曽病院精神科外来開設以降,保健所と人的交流も含め相互連繋を深め地域精神衛生活動が前進し,医療の名のもとに進めちれる措置入院における患者の人権無視の実情を明らかにし,人権無視の形での措置入院を46年以降ゼロとし,外来治療を中心にする方針をとっているが,過去5年間には入院させざるを得ないケースは約70件に達している.
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