Japanese
English
第7回綜合医学賞入選論文
エストロゲン・カルバルソン併用による帯下の治療効果
Clinical effects of a combined use of estrogen and carbarson on leucorrea
池羽 新一
1
,
小口 圭太郎
1
Shinichi Ikeba
1
1順天堂大学医学都産婦人科学教室
pp.880-885
発行日 1957年12月10日
Published Date 1957/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201661
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
緒言
従来帯下の治療法としては洗滌療法,乾燥療法,各種薬剤の塗布並びにタンポン療法,理学的療法等があり,また卵巣機能の低下による腟壁の抵抗性減弱を予防,或いは改善する目的からホルモン剤も使用されてきた。近時各種抗生物質の相次ぐ出現により帯下の治療面にも一大転機をもたらし,その報告は枚挙にいとまのない程であるが,原因の異なる帯下を同一方法で治療しても必ずしも同一効果をあげるとは限らない。正常婦人においてエストロゲンの消長に伴う腟の各種性状の変化はすでに明らかであり,概ね次の通りである。即ち卵胞期には腟内容中に腟上皮の比較的表層の細胞が多く,排卵後期を境として比較的深層の細胞が多く出現して表層の角化細胞は消失する,腔上皮表層上部の細胞はグリコゲン及び脂肪を多く含有するが,中層以下の細胞には殆んど証明出来ない。卵胞機能の旺盛な時期には腟上皮は分化し,剥脱し,角化に近い変化を現わし,また白血球は著しく減少し,腟内容の酸度も高く,従つて細菌も少ない。卵胞機能衰退の時期には上皮の分化,剥脱は減じて白血球が増加する。エストロゲンの腟粘膜への作用を応用して,これを臨床上帯下の治療に応用することは,適応を選択すれば使用価値が大きいへ一方カルバルソンの抗トリコモナス作用はすでに証明され臨床上使用されている。
Copyright © 1957, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.