原著
骨盤結合織の炎症,特に膿瘍について
三宅 秀郞
1
1国立熱海病院産婦人科
pp.531-538
発行日 1954年9月10日
Published Date 1954/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201092
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骨盤結合織はその解剖的関係から見ても産婦人科疾患と密接な関係があるのは云う迄もない。所がこの部の病変については(イ)子宮癌手術特に広汎術式後の創腔の炎症とドレーンの問題,及びリンパ嚢腫,(ロ)骨盤鬱血症即ち昔はParamet-ritis post.chr.と,今はParametrose其他の語で呼ぼれる症候群の2点を除くと,臨床報告の記載は少ない。その中でも割に多い産褥流産時の伝染によるものを除くと,炎症ことに膿瘍例は僅に近藤氏5)の報告を見るに過ぎぬ。即ち氏は骨盤結合織炎の数例と題して尿路周囲殊に前部骨盤結合織の膿瘍例を報じている。
然し自験例からしても産褥伝染以外の骨盤結合織膿瘍はさほど稀と思われぬのに何故此方面の臨牀報告が小ないのだろうか。之は本疾患が外科,泌尿器科,産婦人科の境界領域なので双方から軽視され勝ちだとするよりも,後述の如く実際問題として骨盤結合織部の炎症特に膿瘍は開腹しないと病変部の詳細は不明なので,腹膜炎にとよる膿瘍又は附属器の変化と考えられたのが主因ではないかと思う。以下自験例につき述べて見たい。
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