症例研究
卵管妊娠中絶時に於ける外出血についての考察
福田 正邦
1
1京都府立医科大学産婦人科学教室
pp.278-280
発行日 1954年5月10日
Published Date 1954/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201031
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従来卵管妊娠中絶時における外出血の発生機転には2つの考え方がある。その1は卵管腟に於ける妊娠の成立に基くものと考えられる脱落様変化を呈した子宮内膜が卵管妊娠中絶によつて剥離排出されることに起因する出血であり,他の1は卵管妊娠中絶による卵管内溜血或は腹腔内血液が子宮腔を経て逆流することに起因するものである。然し卵管妊娠中絶患者にみられる外出血が常に以上の機転のみで説明され難いことは屡々経験するところであり,橋爪教授も産科と婦人科19巻7号に述べているように他の機転によると考えねばならないような場合に遭遇することは事実である。私は相次いでこのような例に遭遇したのでその概要を報告するが,偶々これらの例が,何れも予定月経の前後を期として出血を開始していた点に興味を感じ,当教室で扱つた卵管妊娠中絶手術例中疼痛発作に先立つて外出血を開始したもの,換言すれば持続出血開始の当時には少くとも自覚的にはそれ以外に卵管妊娠中絶の診断的根拠を求め得なかつたであろうと思惟される63例について出血開始の時期につき統計的観察を試みたのでその点についても併せて考察する。
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