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妊娠中絶をめぐって〔4〕—出血と感染
大島 正雄
1
1母性科学研究所
pp.36-39
発行日 1963年9月1日
Published Date 1963/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202607
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1.はじめのことば
人工妊娠中絶にせよ,自然流産にせよ,その後の経過を観察する上に,注意すべきものとして出血と感染があります.出血は一定の期間つづくものですが,それがあまりに大量であったり,それほどの量でなくても長期間つづく時は,何らかの合併症を疑わせるにじゅうぶんであります.それに反して一定期間内で止血するときは,いちおうはよい経過と推定することができます.このように,予後を判定する上に,出血は有力な資料の一つということができます.
感染は発熱という事実によって注意をひくものではありますが,今日では,子宮穿孔などの重篤な合併症のない限り,短期間に解決がつきますしまた,そのように処置することができます.しかし,これとても,処置の時期を誤ったり,適切を欠くときは,内性器全般に波及するおそれがあります.また一方,発熱をば子宮内感染とばかりに思いつめその先入感にとらわれて内科の疾患が合併していることに気づかぬ場合もないとは限りません.いずれにしても,中絶後の予後判定の上からは出血と発熱のこの二つは,注意を怠ることのできないものであります.
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