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産科方面に於ける結核療法,特に人工妊娠中絶術に就て
町野 碩夫
1
1鹿兒島縣立醫學專門學校
pp.253-257
発行日 1949年7月10日
Published Date 1949/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200222
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緒言
以前結核は胎盤を介して母體から胎児に移行するものだと信ぜられていたが,精細な組織學的檢索の結果,母體が重症な場合は勿論,假令輕症な場合でも胎盤に結核性變化を認め得たのみか,分娩直後の新生兒臓器,殊に後腹膜内リンパ腺に結核病巣を發見し得たのである.而もその感染經路は最初床脱落膜及絨毛間腔に限局し,該部から間質中の絨毛上皮を破壞して血管中に侵入することが闡明された.仍て最早結核菌の胎生的移行の存在を疑う餘地なく,その頻度や緊要性が後天性感染に對抗して向けられることゝなった.なおこのほか,分娩後結核母體から授乳感染の危險すら存在するのである.之結核が産科的方面に於て重要視せらるゝ所以である.
飜つて結核に對する療法〓ずるに實に多種多様で,其非觀血的である藥物療法の如きも,いちいち枚擧するに遑がない位で脂肪酸(例之ロヂノン酸,カプロン酸)の如きも動物實験と異り人體結核の治癒は望まれず,セファランチンも亦生體内では強力な殺菌力を示すが人體内では前同様,何等積極的な効果なく,かの虹波と共に1の刺戟療法たるに止まり,何等化學療法としては認められない状態である.
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