原著
正常妊婦における心聽診上の變化とその部分誘導心電圖
南 茂夫
1
,
猿橋 泰
2
1市立甲府病院
2信州大學醫學部
pp.221-226
発行日 1951年6月10日
Published Date 1951/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200491
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はしがき
妊婦心の變化に就ては,それが産婦人科及内科の限界にあるせいか,今日迄兎角等閑に附せられた惧れがあり,從つて未だ不明確な點が多く,心臓脚氣等の病名で送られてくる患者で,我々から見ると單なる正常妊婦の心の變化に過ない場合も少なからずあるのであつて,こうした場合,はからずも人工妊娠中絶の犧牲を強いられる症例も數多くあるのではあるまいか。こうした意味からも妊婦心の變化が正常の異常かを知ることは大切であつて,我々はその一端に資するべく本研究を企てた。
一方在來の肢誘導心電圖は,心機能を判定する爲には直接的方法と云い難く,從つて心臓の左右いずれに障碍があるかを知るに適ぎない。然るにGroedel1)は前胸部に左及右心室の働作電壓の最強に現われる2點を發見し,之を部分誘導心電圖と稱して左右心室各個の心筋状態を知ろうとし,その心電圖の初期動搖の大さ及形に主眼を置いた。然るに清水2),池田3),三木4)等は主として後期動搖に主眼を置き,之と臨床症状との關係を綜合的に觀察した。かくして部分誘導法では,左右心室各個の心筋障碍を知りうるばかりでたく,肢誘導で判明し得ぬ病的變化をも探知しうることがあるといわれている。
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