原著
子宮頸癌及び子宮腟部糜爛に於ける表面擦過塗抹法並に腟内容塗抹法の診斷的意義に就て
田村 治雄
1
,
西嶋 明
2
1日本醫科大學産婦人科教室
2山形縣公立酒田病院産婦人科
pp.217-221
発行日 1951年6月10日
Published Date 1951/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200490
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緒論
癌に關して早期診斷,早期治療が重要である事は勿論であるが,性器癌に於ても此の意味よりして最近Papanicolaouの創見になる腟塗抹標本法(Vaginal smear method)が不動の地位を確立しつゝある。即ち從來の組織切除術,或は診査掻爬術等による組織學的検査法,Hinselmanの所謂腟照明鏡検査法,Schillerの沃度試驗法等は何れも有徴候癌に對する比較的の早期診斷法であつて,所謂臨床前癌症(Preclinical cancer)に對する診斷法としては腟塗抹標本法は現在正に最優秀で劃期的な法と云えるであろう。
余等の報告は第2回日本産科婦人科學會總會に於ける石川教授宿題報告"腟内容の形態學的研究"の一端であり,其の主眼點は前記の所謂「臨床前癌症」に對する癌診斷と云つたものではなく子宮腟部糜爛の表面擦過塗抹法又は切除組織壓挫塗抹法の癌診斷的意義に就てであつて,Hinselm—anのKolposkopie,SchilleのJodprobe等に相當するものであり,又Ayreの特殊な擦過器による扁平圓柱上皮連合部擦過法(1949) Foot etalの同じく摩擦法等に類するものであり,Schillerの表層擦過法(1928)と略々同一のものである。而て同時に子宮癌,子宮腟部糜爛の場合の帶下性状,及び對照として糜爛を伴わない炎性帶下と非炎性帶下に就ても併せ觀察した結果を記述す。
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