特集 避妊と不妊
不妊症の原因,診斷及び治療
不妊と腟内容塗抹標本
石川 正臣
1
1日本醫大
pp.570-573
発行日 1952年12月1日
Published Date 1952/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200724
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はしがき
腟内容の塗抹標本を検査することによつてわれわれは子宮癌その他の性器惡性腫瘍の診斷を下すことができるが,またこれによつて卵巣機能のありさまやホルモン劑の效果などを知ることができる。ここに問題とされた不妊の原因にはいろいろのものがあるが,その重要な原因の一つとして卵巣の機能異常がある。すなわち卵巣において卵胞が成熟し,一定の周期をもつて排卵され,その排卵の後で黄體が形成され,その間にあつて卵胞ホルモンと黄體ホルモンとが内分泌され,これが子宮内膜や腟壁の粘膜などに一定の影響を及ぼしてゆくということに障碍が起るならば不妊が起り得るのである。
卵巣の機能が正常に營まれているかどうかは普通に發育している子宮が存在するならば月經という現豫が見られるか否かによつて知ることができる。しかし周期的に見られる子宮出血のすべてが必ずしも排卵を伴うところの月經であるとはいえない。從來月經というものは卵巣に排卵が起り,黄體が形成され,その黄體が衰えはじめる時に起る子宮内膜からの出血であるとせられていた。事實これが多いのであり,健康な婦人の性成熟期を通じて見られるものであるが,近年になつてこのほかにいわゆる無排卵性月經Anovulatory Me-nstruationというものがあることがわかつたのである。
Copyright © 1952, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.