原著
子宮癌及子宮筋腫の酵素學的研究Esterase及Kathepsinに就て
伊藤 久
1,2
1昭和醫科大學生化學教室
2昭和醫科大學産婦人科學教室
pp.185-187
発行日 1951年5月10日
Published Date 1951/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200481
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緒言
人腫瘍組織の酵素學的研究は既に多數に上つているが,腫瘍の對照となるべき健康,正常組織の選擇に正鵠を缺いていた。唯Sugiura,Pack及Stewartは腫瘍の對照を適正に選んだ點で注目に價する。即ち彼等は膵臓腺癌と正常膵臓を酵素學的に比較檢討した。それは澱粉分解酵素,Ester分解酵素の作用に就てであつた。そして兩者の極めて近似していることを報告している。
著者は子宮癌及子宮筋腫を對照として兩者の酵素學的研究は母組織を一にする腫瘍の良性及惡性即ち惡性化の問題の生化學的研究の端緒とならんと考えてこの研究を企てた。ここに對照となるべき母組織即ち正常子宮は得られなかつたが,妊娠子宮の例證を得て檢討した。實驗材料,酵素液の作り方。手術により剔出した子宮癌,子宮筋腫及妊娠子宮の新鮮材料を秤量し,細切後乳鉢で粥状とする。これにGlycerinを加えて一定量にする。例えば組織粥3gならばGlycerinをもつて全量を10ccとする。攫拌後2-3日にして薄層の脱脂綿またはガーゼで濾過した。これを酵素液とした。この1ccは新鮮組織の0.3gに當る。酵素液の組織濃度を組織の乾燥材料から換算しても相互に著差はない。このことは組織の新鮮材料の一部を除濕器中に重量不變迄乾燥して求めた水含有量(表中に記入)によつて示される。因に材料を提供した患者は全く放射線治療を受けなかつたものである。
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