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外科的腎結核に對する疑義
武藤 完雄
1
1東北帝國大學
pp.1-3
発行日 1947年8月20日
Published Date 1947/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200227
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腎結核は日常遭遇する疾患であり,其の診斷法や治療方針は既に決定的で,其他何も問題がない樣にも見えるが,日常個々の症例を檢討すると色々の疑義が起る。剔出の都度割面を精査すると腎盂病變の重要性が漸次認識され,腎結核の本態に對する疑義となつた。恩師杉村教授は昭和15年東北醫學總會で本症に就て多年の蘊蓄を傾けられたが,本症病理發生に關し動物實驗では結核菌を靜脈内に注入すると皮質結核が出來るのに,外科的腎結核は皮質でなく,乳頭から腎實質内に蔓延して行き,乳頭先端の崩壞と共に結局皮質表層の方まで帶状に病竈が出來ると,外科的腎結核(以下單に腎結核)の特異性を説明された。
何故に腎結核病竈は乳頭に始まるか。腎結核の病理乃至發生に就ては種々の見解があつたが有名なWildbolz等(1913)の業績以來氏等の説が一般に(本邦でも)承認されて居る。此の學説に依ると結核菌は腎細尿管から排出され腎盞ニッシエに初發竈を作り,病變は乳頭側面を經て先端を崩壊,又同時に髓皮質に蔓延し多くの場合病竈は乾酪變性に陥り,所謂乾酪空洞型となると云ふ。腎結核が乳頭に始まり之から髓質皮質に蔓延すると云ふ事が定説となつたが,本症にも動物實驗の如く皮質病竈から始まるものはないか,或は皮質病竈から髓質乳頭に蔓延するものはないかと搜す樣になり,外科的皮質結核は極めて稀有な例として珍重された。當教室からも1例を報告したことがある。しかし其後吾々は前述の如く腎結核の本態に疑義を抱いたのである。
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