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はじめに
近年の食生活の欧米化による肥満人口の増加を1つの背景として,日本でも子宮体癌は最も頻度の高い婦人科癌の1つとなっている.子宮体癌の多くは子宮内膜異型を前癌病変とする類内膜癌であり,かつ初期癌であるI期病変である.よって,子宮体癌の多くは手術療法のみで治癒することが多い.この子宮体癌に対する標準的手術治療は単純子宮全摘術・両側付属器摘出術を含み,これに加え,骨盤・傍大動脈リンパ節郭清術ならびに大網切除術が必要に応じて行われる.この手術方法に対しては開腹術が一般的な選択であったが,過去10年に飛躍的に発達した腹腔鏡技術に伴い,また,近年米国で行われた開腹対腹腔鏡による無作為臨床試験の結果により,米国では子宮体癌に対する手術選択の第一は腹腔鏡アプローチに劇的にシフトしつつある.すなわち,これら開腹・腹腔鏡の二術式による予後の差は認めず,また腹腔鏡群は開腹群に比し,有為に合併症が少なくかつ早期退院・回復が可能であったという,腹腔鏡下アプローチを支持する結果によるものである(LAP2トライアル)1).
日本では2014年に子宮体癌に対する腹腔鏡下手術が保険適用となり,この領域に対する今後の展開が期待される.ただ,日本では肥満人口は2〜3%と稀ではあるものの,子宮体癌の患者の多くは高度肥満を合併することが多く,腹腔鏡手術を計画する際に術者を悩ます問題点の1つとなると考えられる.私は米国婦人科腫瘍医として過去の3年で約60例のBMIが30を超える肥満患者に対する腹腔鏡手術を行った.米国の肥満人口は3分の1を超え引き続き増加傾向にある2).われわれの施設での子宮体癌の平均BMIは35を超え,50を超える症例も数多くある3).自慢できることではないが,おそらく日本人としては最も高度肥満に対する子宮体癌の腹腔鏡手術を行っているのではないか.日本でも今後問題となってくるであろう肥満社会を前提に,肥満患者に対する腹腔鏡手術のコツを経験的に紹介する.
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