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編集後記
倉智 博久
pp.616
発行日 2014年6月10日
Published Date 2014/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103813
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最近のマスコミは,STAP細胞の話題で持ちきりです.新聞やテレビのニュースはもちろん昼のワイドショーや週刊誌なども含め,これほど多くのマスコミに登場する話題は他に記憶がありません.取り上げられる内容もSTAP細胞,STAP現象は実在するのか?というサイエンスとしての本質の部分はもちろん,論文中のデータの不正の有無を含め研究のあり方や論文執筆のルール,若い研究者の実情とそのおかれた立場の厳しさ,はたまた,小保方氏の会見時の服装や涙に至るまで,ワイドショー的な話題にも事欠きません.今回の騒動に対する我々の一致した見解は,理研と小保方氏を取り巻く著名な研究者への疑問と批判であると思われます.当初の会見では,発見された現象のサイエンスとしての意義にとどまらず,「割烹着をまとうリケジョの星」としても絶大な賞賛が与えられたのに,マスコミの豹変ぶりにも驚くばかりです.「全聾の作曲家が魂の旋律」と称賛された佐村河内さんへの賞賛と失望とも合わせ,我々は「物語り」を過剰に作り・消費するようになったという新聞記事(朝日新聞4月22日付)もありました.最近,ディオバンに関する臨床研究での不正など我々の周囲で様々な研究不正がマスコミをにぎわすようになりました.我々の学術活動の成果を広く一般国民にも知らせることが求められ,自身の研究成果をマスコミに積極的に発信すべきであることも事実です.また,我々の側にもマスコミを利用して自身を売り込むという意図もないとは言えないのかもしれませんが,マスコミの功罪とリスクには大いに考えさせられます.研究活動においては,根本的には何よりもサイエンティストとしての良心に基づいた行動が求められます.
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