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編集後記
倉智 博久
pp.208
発行日 2009年2月10日
Published Date 2009/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101973
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周産期医療はその話題がマスコミに載らない日がないといっていいほど,国民の関心事となっている.最近の話題は,東京での「脳出血による妊婦死亡」であった.多くの病院が「妊婦の受け入れ困難」で,最初に連絡を受けた墨東病院が受け入れたが,救命できなかった.地域の総合周産期センターであった墨東病院がセンターとして機能できていなかったのであるが,その背景には産婦人科医不足がある.せいぜい4人,5人の産科医で毎日2人ずつ当直をするということが土台無理な話で,10人でも十分ではない.
さらに,「妊婦の受け入れ困難」の要因の1つがNICUの不足であるという論議となるや,文科省は突然,25億円の予算を用意するから,すべての大学病院にNICUを設置せよというお達しを出した.例によって,文科省のお達しは突然で,現場の状況をまったく勘案しない机上の空論である.一体,行政側は,予算をつけてハードを設置すれば医療の現場のさまざまな問題が解決すると信じているのであろうか?新生児の専門医が十分に確保できないでNICUが設置されても,まともに稼動するはずはない.NICUが設置されていない地方大学などでは,2~3人程度の新生児専門医で新生医療を担当しているのが現状である.ここで6床もNICUを設置して十分に稼動させるためには,県内の一般病院から新生児専門医を引き上げてこなければならないことは目に見えている.一般病院でNICUを設置している病院ではそのあおりを受けてNICUの運用は難しくなるであろうことが危惧されるわけで,これで果たして地域の「妊婦受け入れ困難」が減少するであろうか?
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