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編集後記
倉智 博久
pp.1506
発行日 2008年11月10日
Published Date 2008/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101912
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今年は,まさに,産婦人科にとって激動の年です.8月20日には「県立大野病院事件」が無罪で結審しましたし,来年1月からは待望の「産科無過失補償制度」がスタートしようとしています.「医療安全調査委員会」第三次試案の行方はいまだ不透明ですが,産婦人科医としては,関心の深い問題です.
最も重要な関心事は,何といっても「県立大野病院事件」でしょう.幸い加藤医師の無罪が確定しましたが,この事件では誰も幸せにはなれなかったことにもっと注目する必要があります.加藤先生は,無罪確定後も「長い,つらい2年半だった」と述懐していますが,勝訴しても最良の結果が元の情況への復帰です.この2年半は何も生み出してはいないのです.一貫して支援してこられた福島県立医科大学の佐藤章教授にとっても,産婦人科医会の支援メンバーにとっても,まったく得るもののない時間だったと思われます.一方,遺族の方々にも不満とやりきれない気持ちが残ったことでしょう.
医療現場では,救い得ない患者がいることは当然です.時には過誤も起こり,それによる重大な結末も起こります.結果が悪ければ,何が何でも医師が責められるという最近の風潮は由々しいことです.医療事故が起こった場合には,隠蔽することなく患者とその家族に説明し,過誤があれば患者が失った損失を補償することは当然ですし,時には行政処分を受けることもあるでしょう.しかし,刑事責任は別です.診療行為に対して,結果が悪いからといって刑事罰を科そうとすることは,今回のような不幸を招く可能性を孕んでいると思われます
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