今月の臨床 常位胎盤早期剥離─ワンランク上の診断と治療
治療におけるポイントと課題
4.救急搬送における問題点
山田 学
1
,
杉本 充弘
1
1日本赤十字社医療センター産婦人科
pp.1358-1362
発行日 2011年11月10日
Published Date 2011/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102835
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
全分娩のうち0.5~1%の症例が臨床的に常位胎盤早期剥離(早剥)と診断される1~3).早剥の中には胎盤剥離が軽微なために母児の予後に悪影響を及ぼさないものもあるが,広範な胎盤剥離によって胎児側には低酸素症・酸血症,母体側には播種性血管内凝固(DIC)や出血性ショックといった,致死的となりうる病態が短時間のうちに進行する重症例も少なくない.重症の早剥に対しては産科スタッフのみならず,新生児の蘇生救命を担当する小児科・新生児科や母体の全身管理にかかわる麻酔科・救急科の協力が必要になる.
日本の分娩は2009年の日本産婦人科医会全国調査によると,約50%が診療所(施設当たりの常勤医数平均1.4人),約30%が周産期センター以外の一般病院(施設当たりの常勤医数平均4.3人),約1%が助産所といった比較的マンパワーの少ない施設で取り扱われている4).早剥のリスク因子として早剥既往や妊娠高血圧症候群などが挙げられる(別稿「病因とリスク因子(p1308)」参照)が,リスク因子のない妊婦が早剥を発症することもまれではない.したがってリスクの低い妊婦の管理を主として行っている小規模分娩施設であっても早剥に遭遇することは避けられない.その際には症例の重症度と自院のマンパワーに応じて救急搬送をするか否かを決断し,迅速に実行しなければならない.
本稿では総合周産期センターとして救急搬送を受ける側の立場から,実際の搬送症例を例示しながら早剥救急搬送の問題点と対策案を提示する.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.