今月の臨床 常位胎盤早期剥離─ワンランク上の診断と治療
診断におけるポイントと課題
2.常位胎盤早期剥離の超音波所見
増﨑 英明
1
,
東島 愛
1
1長崎大学医学部産婦人科
pp.1318-1324
発行日 2011年11月10日
Published Date 2011/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102829
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常位胎盤早期剥離(早剥)は産科診療の中でも重篤な救急疾患である.早剥は正常位置に付着している胎盤が,妊娠中または分娩経過中に,胎児娩出前に子宮壁から部分的または完全に剥離する病態である.剥離の程度によりさまざまな臨床像をとるが,胎盤を介した胎児への血流が部分的あるいは完全に遮断されるため,胎児は低酸素状態となり,胎児機能不全や子宮内胎児死亡をきたす.また母体にはDICを生じるなど重篤な疾患といえる.そのため本症を的確に診断することは産科診療においてきわめて重要であるが,必ずしも容易ではない.妊娠末期に腹痛や性器出血が突然出現するような典型例は,発症からの経過は急速で診断は比較的容易であるが胎児死亡のリスクが高い.そのような典型例のほかに,切迫早産と区別がつきにくく慢性的な経過をたどる非典型的な早剥も少なくない.早剥はさまざまな臨床像をとることを前提として,まずは症状から疑い,それらに超音波断層法を行ってみることが診断のきっかけとなることが多い.ここでは早剥の臨床所見とともに,主に超音波所見について解説する.
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