今月の臨床 子宮頸癌─予防と妊孕性温存のための治療戦略
妊孕性温存のための治療戦略
3.広汎子宮頸部摘出術の適応と限界
新倉 仁
1
,
八重樫 伸生
1
1東北大学大学院医学系研究科婦人科学分野
pp.1244-1247
発行日 2011年10月10日
Published Date 2011/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102807
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
国内でも多数の施設で広汎子宮頸部摘出術が行われるようになってきているが,施設ごとの基準はさまざまでまだ一定のものは決められていない1).当科の基準も,臨床進行期Ia2~Ib1期,腫瘍径は2 cm程度までの扁平上皮癌で,画像診断上,子宮頸部以外(遠隔転移,子宮体部浸潤,リンパ節転移など)に病変を認めず,妊孕能の温存を強く希望している症例としており,暫定的なものである2).
本来,広汎子宮全摘出術の適応となる症例のうち妊孕能を温存したい症例が広汎子宮頸部摘出術の対象となり,温存手術により根治術に比較して有意に再発率の上昇などの有害事象が増加する対象群が明らかになることで,この術式の限界も明らかになってくる.また,予後の良い初期子宮頸癌に対する広汎子宮全摘出術と広汎子宮頸部摘出術の両群のrandomized studyで結果を得るのは困難であることから,case-control studyで検討した報告3)はあるものの,まだコンセンサスは得られていない状況である.さらに,本術式の最終ゴールは健児を得ることであるから,再発がないだけでは不十分で,健児を得るに十分な妊娠を継続できた対象から本来の適応を考えるべきであり,産科的な検証も必要になる.
そこで,本稿ではこれまでの多数例を対象にした報告を中心に検討して,現状での広汎子宮頸部摘出術の適応と限界を考えてみたい.また,腟式と腹式では本質的に術式が違い,基靱帯切除レベルも異なるとされ4),適応も異なる可能性があるので,それぞれについて触れる.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.