今月の臨床 不妊診療のABC─ARTの前にできること
不妊原因診断とARTの前の対処法
5.子宮内膜発育障害
杉野 法広
1
,
嶋村 勝典
2
,
高崎 彰久
2
1山口大学大学院医学系研究科産科婦人科学
2済生会下関総合病院産婦人科
pp.1131-1136
発行日 2011年9月10日
Published Date 2011/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102779
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子宮内膜の発育は,着床と妊娠の成立には重要な因子である.実際に不妊治療において,子宮内膜の厚さが治療成績に影響することが報告されている.すなわち薄い子宮内膜を呈する子宮内膜発育不全の症例は妊娠しにくいことが指摘されている.子宮内膜発育不全の症例に対しては,エストロゲン製剤を投与したり,ゴナドトロピン製剤を投与して血中エストロゲン濃度を上げる試みをしても,なかなか厚くならない.したがって,このような子宮内膜発育不全の症例は難治性の不妊症として体外受精─胚移植などの生殖補助医療(ART)の対象となる.そのため,通常の不妊治療において子宮内膜の発育を改善できれば,ARTに至るまでに妊娠できる可能性はある.また,たとえARTを行ったとしても,子宮内膜の発育が改善されない限り,着床不全となり妊娠予後は不良である.
薄い子宮内膜を呈する症例に対しては,まずその原因を考え治療することが大切である.原因が明らかなものとしては,クロミフェンによる抗エストロゲン作用によるものや子宮内容除去術後に起こるものがある.一方,これまでは原因不明とされていたものについて,最近われわれは,その多くが子宮内膜の血流不全によるものであることを見出した.本稿では,薄い子宮内膜を呈する子宮内膜発育不全を原因別に分けて,それぞれの対処法について述べる.
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