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はじめに
周産期管理は,時代とともに変化してきた.重篤な悪阻や妊娠中毒症〈現,妊娠高血圧症候群 : pregnancy induced hypertension(PIH)〉,分娩時の出血管理など,“妊娠合併症から母体の生命を守る”という母体中心の管理から,超音波装置の普及とともに母体だけでなく“胎児を管理する”という概念へ変化した.胎児の奇形や胎児発育遅延(fetal growth restriction : FGR)などの早期発見,感染症の予防,胎内環境を考慮して,よりよい時期にterminationする管理方法について多くの検討がなされた.しかし,1986年にBarkerら1)が提唱した成人病胎児期発症説は,周産期管理とは分娩がゴールではなく,成人した後の健康までを視野に入れた予防的医療の原点であることを世界に示し,周産期医療者に大きな発想の転換をもたらした.
胎児が子宮というブラックボックス内にいる以上,その管理・介入は経胎盤的に行う(一部の外科的胎児治療を除く)こととなる.栄養管理とは胎児管理であるという観点から,どのような方針で行えば健やかな胎児の育成につながるのか?という点がいろいろな視点から議論されている.
妊娠前の体格・栄養は,受精着床~胎盤形成までの重要な時期へその影響を及ぼすと考えられ,周産期予後に影響することが多くの報告で確認されている.日産婦のガイドラインでも妊婦のやせは低出生体重児・早産のリスク上昇を,肥満は妊娠糖尿病・PIH・帝王切開・死産・巨大児・NTD(neural tube defect : 神経管閉鎖障害)などのリスク上昇と関連することが記載されている2).また妊娠前からの葉酸摂取とNTDとの関連については世界的なコンセンサスを得ている.
本稿では,わが国における妊娠可能年齢の女性の妊娠前の栄養・体格の現状と,周産期予後に与える影響について述べる.また,BMIのみでなく主なビタミンやミネラルなどの微量栄養素と周産期予後についても概説した.
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