今月の臨床 妊婦と胎児の栄養管理
妊婦の体重管理
妊娠前の体型と周産期予後
村上 真紀
1
,
堤 誠司
1
,
倉智 博久
1
1山形大学医学部発達生体防御学講座女性医学分野
pp.264-267
発行日 2006年3月10日
Published Date 2006/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100048
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はじめに
多くの疾患において,肥満ややせは疾患の発症および経過に影響を及ぼす.妊娠に関しても,妊娠前の体型が母児双方の予後に影響を及ぼし,予後を悪化させるリスクとなりうることが報告されており,これまで多くの研究がなされてきた1~4).妊娠前の肥満は,妊娠糖尿病5~7),妊娠高血圧症候群8, 9)の発症のリスク要因であり,また帝王切開の頻度を上昇させることも知られている10).一方,妊娠前にやせている女性において,妊娠中の体重増加量にかかわらず,児の低出生体重および早産のリスクが高まるという報告もなされており11, 12),妊娠前のBMI(body mass index)は周産期における母児の重要な予後規定因子といわれている.
このような研究・報告が多くなされている一方,わが国における同様の研究は決して多いとはいえない.また,近年わが国では生活習慣,食生活などの生活習慣が変化しつつあり,肥満の増加が懸念される一方で,若い女性においてやせた体型を望む傾向がある.厚生労働省の調査ではこの20年間で10歳代から30歳代女性のやせは2倍に増えており,BMI 18.5 kg/m2未満のやせの割合は26.0%と全体の4分の1を超す値になっている(図1 : 平成14年厚生労働省栄養調査)13).妊娠可能な年代にある女性の体型が変化してきているこのような背景をふまえて,最近のデータによる臨床疫学的な手法を用いた検討と,それに基づく妊娠前のBMI別の管理指針が必要ではないかとわれわれは考えた.以下にわれわれの調査研究成績を記す.
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