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1 概念と病因
月経異常は婦人科を受診する患者の主訴の中で,不正性器出血,下腹部痛,挙児希望などと並び,最も多い愁訴の1つである.いい換えれば女性のQOLを損なう代表的な症候である.月経異常の種類には,(1)月経発来時期,(2)月経周期,(3)月経持続日数,(4)月経血量,(5)月経随伴症状,に大きく分けられる.月経異常をきたす原因として視床下部─下垂体─卵巣系の機能異常に基づく排卵障害,黄体機能障害,または卵巣自体の異常など内分泌学的に原因,障害部位が明らかなもの,子宮,腟の器質的病変によるもの,さらに機能性月経困難など器質的病変のないものがある.また症候的には不妊症から神経性食思不振症(摂食障害)までさまざまであり,月経異常を一律に扱うことは難しい.いずれにしても月経異常の原因は排卵の有無により大きく左右される.まずは現代医学的検査により月経異常の原因を究明し,治療を行うことが当然であり前提である.しかし月経異常は日常の臨床の場でその対応に苦慮することの多い症候でもある.というのも月経異常は生殖器の器質的な原因から起こるのにとどまらず,ほかの臓器系や心因などもその原因となりうるため,月経異常を取り扱う際には常に全人的医療という意識が求められることがある.卵巣機能のすべてが明らかでない現在,個人の全身状態を観察して,その根底にある異常を改善することによる漢方療法も意義ある方法と考える.現代医学,例えばホルモン療法など以外に漢方療法が奏効する症例がある.実際に月経異常に対する漢方療法は,月経周期の異常,月経随伴症状に関するものが多く,発来時期,持続日数,経血量については少ない.本稿では排卵障害・不妊症,月経困難症に漢方療法で良好な結果を得た自験例を基軸に,月経異常への漢方治療の実際を示す.
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