講座
月経異常
石原 力
1
1群馬大学医学部
pp.44-49
発行日 1956年9月1日
Published Date 1956/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201123
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☆月経異常の原因と種類
一定年齢の婦人なら誰でも経験し,また産婦人科ではごく日常的な月経については,もはや何もかも明らかにされているかの様に思われるかもしれないが,実際にはそれほど簡単ではなく,現在なお研究が進められている段階にある.周知の様に,荻野博士により排卵後12±2日で月経が来ることが知られたが,今日では排卵がないのに月経(様出血)の来ることがわかり,月経ということばの使い方にさえ大きな変化が起つている.ここでは一応「月経は健康な子宮からの反覆性出血である」(corner)と考えることにしよう.次にこの出血がどの様な工合で起つてくるかについても,近頃非常に興味深い説明が現われているが,それはまだ一部を説明できるだけであつて,月経の起り方をすべて説明しつくすことは将来に残されている現状である.何れにせよ,哺乳動物の霊長類であるヒトとサル以外には全くみられない月経というものは,たしかに興味のつきない主題であるといえよう.この様に,月経の起つてくる原因がまだ完全に明らかにされていない以上,月経異常の原因にも不明の点があるのは当然である.しかし多くの実験や観察によつて,今日ではホルモン(下垂体,卵巣,甲状腺,副腎など),神経系(特に大脳,間脳)並びに子宮(殊に血管系)の状態が大きな原因をなしていることが知られており,これに酵素やビタミンなども関係していることが認められている.
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