今月の臨床 絨毛と胎盤をめぐる新知見
絨毛性疾患の病態・病因論
3.絨毛癌
井箟 一彦
1
,
馬淵 泰士
1
,
南 佐和子
1
1和歌山県立医科大学産科婦人科学講座
pp.220-223
発行日 2011年3月10日
Published Date 2011/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102588
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はじめに
絨毛癌は,胎盤の絨毛を構成する栄養膜細胞(トロホブラスト)が悪性化(malignant transformation)して発生する癌である.絨毛癌は一般に増殖能,浸潤能が旺盛で,早期より肺,脳,肝など全身の臓器に血行性転移を起こしやすい悪性度の強い腫瘍であるが,一方,化学療法に対する感受性が非常に高いという特徴を有する.1960年代にはわが国でも絨毛癌の死亡率は50%を超えていたが,先行妊娠となる胞状奇胎管理の確立,化学療法の進歩,腫瘍マーカーであるhCGの検査法改良などにより,1990年代以後はその寛解率は85~90%となり,過去40年間に最も治療成績が向上した固形癌といえる.
絨毛癌は妊娠時のトロホブラストに由来する妊娠性絨毛癌と,胚細胞腫瘍または他癌からの分化異常に由来する非妊娠性絨毛癌の2つに分類される.妊娠性絨毛癌の場合は父方の抗原を有する移植腫瘍とみなすことができ,免疫学的にも興味深い腫瘍である.本稿では主に妊娠性絨毛癌について,その病因,病態,治療について解説する.
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